ストーリー
鬼頭泰子(英由佳)、29歳。ジュエリーショップに勤務している。夫・昭吾(遠藤憲一)は41歳のサラリーマン。結婚3年目で、子供はまだいない。ひと回り年の違う夫は妻を心から愛していた。そして、もちろん妻も。
今日は3回目の結婚記念日。会社帰り、花束を手に妻の勤めるジュエリーショップの前に立つ昭吾。彼はショーウィンドウ越しに、働く妻の姿をジッと見つめていた。そんな夫の視線に気づかない泰子は、年下のハンサムな同僚・前田(高野八誠)と親しげに言葉を交わしている。やがて携帯電話を取り出す夫。彼は妻の携帯に電話をし、体調が悪いから先に帰ると伝え、その場を立ち去った。
その夜、眠っている妻を見下ろすパジャマ姿の昭吾。泰子の頭上にある蛍光灯を点けては消し、消しては点ける。そんな動作を延々繰り返す昭吾の表情は常軌を逸していた。それが、すべての始まりだった。
数日後、リビングで向かい合い食事をする夫婦、それは平凡ないつもの食卓。突然、泰子の顔から笑顔が消えた。リビングに飾ってあった写真立てから全て写真が抜き取られている。それは友達と撮った思い出の写真。「写真、どこにやったの?」「捨てた」。写真ばかりか、夫は妻が実家から持って来た大切なアルバムも捨ててしまっていた。夫は平然と言った。「過去ばっかり振り返っててもさ」。
毎月生活費を渡すからと勝手に銀行口座を解約する、仕事をやめてほしいからと通勤定期を抜き取る、風邪でダウンした妻の体調も構わず一方的に体を求める、調味料が気に入らないと怒鳴りちらし叩き落とす、友人との楽しそうな電話の会話を耳にして突然テーブルをひっくり返す、風呂水が汚いと浴槽に体を押し込む、「近所迷惑になるから」と騒々しいカラオケボックスで力いっぱい殴りつけるetc。短期間のうちにどんどんエスカレートしていく夫の暴力。泰子は自分と同じように夫の暴力に苦しむ中年女性・霧島(りりィ)の紹介で、ある事務所を訪ねた。宗方(小沢和義)というその男は、泰子に言った。「殺してもいいんですよ、正当防衛なら。あなたが死ぬことはない」。宗方はさらに続けた。
「DV被害者が一番に乗り越えなくてはならないこと。それは"自分自身が被害者である"ということに気づくことです」…。