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| 善き人のためのソナタ | |
300字レビュー |
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【こだわりの品(しな)】 年をとってくると、涙もろくなる。そういう例に漏れず自分もまた、最近は映画観て泣くことが多くなった。けれど、自分の場合、普通の人のように恋愛とか、家族とかの話では泣けない。で、この作品では泣いてしまったのだけれど、僕以外の人にとっては、“なんで?”って思われるかもしれない。 旧東ドイツでの話は、国家保安省の局員が主人公。彼はある芸術家を監視するように命令を受けるのだが、その監視している人物の生活ぶりを見ていくうちに、あるいは上司などの不正も並行して見ていくうちに、自分の中にある、理想の社会主義イズムが、彼の単独行動に向かわせてしまうのである。 ここのところ、宣伝資料を見ると、男女の愛だとか、タイトルにもあるソナタの美しい音色によってだとか、そう書いてあるみたいだけど、実際はそうではない。やっぱり、一般の人の気を惹くように、宣伝文句をそのように持っていったのだろうが、映画を観ると全然、違うことがわかる。 そこでは会いもしないし、話し合ったりすることもないんだけど、理想を追い求める男と男の共通の熱意を静かに感じ取って、実際の社会には何の得にもならないと思われるようなもの、でもそれは本当はもっと大事にしないといけないものを描いてくれているのではないだろうか? それはまるで、悟りの境地を探求する修行僧のようなものかもしれない。そしてまた、それは大多数には受け入れられなくて、その人本人が重要だと思えば、それでいいのだろう。その徳の高さに僕は涙したのだと思う。そう信じたいものである。(越智) |