ストーリー
昭和11年に旧制第七高等学校造士館(現:鹿児島大学)へ入学した上田勝弥は、人生の晩節を迎えていた。在学当時、野球部のエースとして鳴らした勝弥は九州帝国大学に進んで医学を学び、戦時中は軍医として南方戦線に従軍した。戦後は東京郊外で開業医を務めていたが、今では息子に代を譲り、高校生の孫が甲子園に出場するのを楽しみにしている悠々自適の身だった。そんな勝弥だが、七高同窓会への出席は常に拒んでいた。
一方、来年は七高の野球部創部百年を記念して、因縁の五高(現:熊本大学)との記念試合が行われる予定となっていた。しかし、その連絡にも「すまんが欠席させてもらう。皆さんによろしく」と答える勝弥。実行委員会の幹事たちは、その言葉が納得できない。
戦後60年、七高で青春の日々を過ごした鹿児島にも、生れ故郷である熊本の人吉にも足を向けようとしない勝弥。そこには、戦場での悔恨と慚愧という深く重い理由があった―。