ストーリー
1996年の冬。その夜、ある病院にひとりの少女が運び込まれた。彼女の名は両儀式。長時間に及ぶ緊急治療により、かろうじて一命は取り留めたものの……その瞳が開かれることはなかった。
やがて二年の時が過ぎた。しかし彼女は目覚めることなく、漆黒の髪の毛だけが伸び、静かに深く眠り続けていた。
そのさなか。彼女は「死」そのものの世界に触れていた。その空間に浮遊するのは「式」自身と、幼いころからともに在り、ひとつの身体で同じ時を過ごしてきた、もうひとりの人格「織」。やがて、ふたりは離ればなれになり―かくして式は目を覚ます。たった独りで。
同時にそこに見えた景色に違和感を覚える。目に映るのは禍々しい線。その線に沿って、崩れゆく森羅万象を幻視する。己の見つめる景色を理解できぬまま、心を閉ざし抜け殻のような日々を送る式。その前に現れたのが、言語療法士の蒼崎橙子だった。同時に、夜ごと病室を彷徨うモノが在た。
果たして、橙子の目的は?式の眺める世界の意味は?そして「彼女」の選択は?
今、新たな目覚めと、式と織が誰より何より大切にした、詩人の様な名を持つかつての同級生…黒桐幹也との再会の時が訪れる。