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「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンを見て凄いと思った。
美しさはもち ろんだがその演技力。
飛行場でのラストシーン。
「好きで別れなければならないけど、私はいつまでもあなたを愛し続けるわ」。
男女の愛よりも正義のために身を引くかつての恋人(ボガート)への思いを表情
ひと つで表現していた。
不思議だった。女神のように端正なバーグマンの美貌のどこに、ほとばしる情熱 が秘められているのか。
ハリウッドでの名声も夫も捨てて、イタリア人映画監督ロッセリーニの元に走ったバーグマンの情熱。透明な魂は炎の情熱を生む。世間体や損得などの計算なしに
愛すること のできる人間は、純粋な魂を持っているのだろう。
「恋多き女」という肩書きは、女性に望まれる貞淑さとは対極にあるが、どちら が真に 純粋なのだろう。世間は不倫を許さない。バーグマンも7年間ハリウッドから追放
されてしまった。しかし、人の情熱を封印する権利など誰にもないのだ。情熱はす べての源。芸術も文化も限りない情熱から生まれるのだから。
バーグマンにとって、恋をすることと演技することは呼吸するように自然なもの だったのではないだろうか。そのふたつなくしては、この世に生きている価値などないと
思われ るほどの。だからこそ彼女は、自らの才能と呼応する才能豊かな男性、自分の情熱 の器を満たしてくれる男性を探し求めていたに違いない。
写真家のロバート・キャパやロッセリーニ監督との恋愛は不幸な結果に終わって しまった。だが、バーグマンは後悔などしていないだろう。
恋は病の一種、熱にうかされ 人は愛の幻想を夢見るだけ…。
たとえそれが真実でも、恋はしないよりした方がいい。それが破滅に向かう恋であっても。誰か傷つけた代償を払わされる時がくるかもしれない。命を賭けた恋が幻だったという現実に直面する時がくるかもしれない。だからといって、恋に対して臆病になるのは愚かなことだ。
恋の亡骸を葬る時 、女はそこから多くのものを得ているはず。別れた男には想像も出来ないような大 きな何かを。
女は恋をすべきなのだ。いつでも、いつまでも。自分が宝石のように輝くために
……。
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