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良家のお嬢様、ハリウッド女優、そして王妃へ…。
華麗なる転身を重ねたグレース・ケリーはシンデレラも負けそうな現代のおとぎ話に生きた女性だった。
だが、「王子様と結ばれて末永く幸福に暮らしました」という
お決まりのくだりはグレースにはあてはまらなかった。
「今度、生まれ変われるとしたら何になりたいですか?」
というインタビュー に 、グレースは自分のペットを見て答えた。
「そうね。犬がいいわ……だってとても気楽そうだから。」
と微笑を浮かべ答えていた。 その言葉が物語るのは、穏やかな微笑とは裏腹の、『気楽』とは程遠い彼女の生活だった。
皇室に嫁ぐということは、その国家に嫁ぐということでもある。 個人の感情や自由を犠牲にしなければならない時もあると思う。
それに加えて、グレースは子供のスキャンダルなど気苦労が絶えなっかった。
幼い頃からグレースは、ある強迫観念に支配されていた。
敬愛する父親に認められたいという願い。
だが、父親はグレースよりも彼女の姉を評価していた。グレースにできることなら姉の方がもっと上手くこなせると言ったことさえあった。
アカデミー主演女優賞に輝いた時、グレース・ケリーは語った。
「これで、やっとケリー家の一員になれました。」
だが、父親に認められるには、まだ不十分だった。皇室に嫁ぐという彼女の選択の一因が、その強迫観念であったと考えられなくもない。
グレースの人生は不幸な幕切れだった。
自動車事故による急死。
その真相には いまだにはっきりしない点があるが、グレース本人は、解明されることを望まないだろう。
葬儀の際、レーニエ大皇は子供たちに両脇を抱えられるようにして歩いていた。その様子を見た時、私は彼の中で占めていた妻の存在の大きさを感じた。過去に何があろうと、年月を共に過ごした夫婦というものには断ち切れない絆が生じるものだ。
グレース・ケリーは最高の王妃だった。
見事に大任を果たしたと思う。 彼女が演じたシンデレラ物語は悲劇だったかもしれないけれど、その舞台で主人公は『最高の名演技』を披露し、私たちを魅了し続けてくれた。
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