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マリリンの並外れたフェロモンは彼女をスターの座に押し上げたが、多くの哀しみを与えもした。
マリリンは「おツムの弱いブロンド女」というレッテルから逃れたい、演技者と
して認められたいと願った。 「本当の私は違う。本当の私を見て欲しい。」 だが、他人が抱いたイメージを払拭するのは難しい。もがき苦しみ、諦め、また
何とかしようと試みる。それは厚い壁に体当たりするようなものだ。マスコミやフ ァンが望むのは、セックス・シンボルとしてのマリリン・モンローだった。その要求には応えてあげなければいけないと思う。自分の願いと他者が望むもの、ふたつ
の狭間のなかで、優しく繊細な女性マリリンは、精神的に追い詰められてしまったのだろう。
逃げ場として手にしたのは、睡眠薬。その挙句、あっけない人生の幕切れ。
可哀想なマリリン…
誰もがそう思うだろう。でも、マリリンは幸福な女性だっ た。少なくとも私はそう思いたい。一人の男性に心から愛された幸福な女性だったと……。
死後、彼女の部屋で見つかった書き置き。それは、かつての夫ジョー・ディマジオに宛てたものだった。
あなたの幸福は、私の幸福。」 短い言葉……。しかし、それこそ、愛の真理を言い当てていないだろうか。離婚の原因は、ディマジオの独占欲と暴力だった。人は愛しすぎるがゆえに、愛し方を
間違えしまうことがある。
ディマジオは、思い通りにならない妻に腹を立てた。
マリリンも夫を理解することができなかった。だが、別れた後もディマジオはマリ リンのことを気にかけていた。無理矢理入院させられてしまった精神病院からマリ
リンを救い出したり、年末を一緒に過ごしたりしたという。 二人ともお互いの過ちに気づき始めていたのではないだろう。マリリンが残した言葉が、それを物語っている。突然の死によって答えは見つからないまま終わってしまったが。
マリリンの人生を思う時、マリリンが唄う「帰らざる河」の一節が思い浮かぶ。
I lost my love on the
river and forever my heart will yearn.
Gone, gone forever down the River of No Return.
Wailaree! You never return to me.
帰らぬ恋人を思う詩。失われた愛はもどらない運命なのだろうか。
たとえ、わずかな行き違いからでも。
亡くなったマリリンの葬儀を取り仕切ったのは、ディマジオだった。そして生前の約束どおり、屈強な元野球選手は彼女の墓に花を絶やさなかった。
今年3月8日、ジョー・ディマジオは84年の生涯を閉じた。
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