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 そこで、どこに行こうかと、ずいぶんと考えた結果、やっぱり知名度の高さ、きらび やかさ、ヨーロッパ映画やインディペンデント映画の豊富さ、歴史的背景のおもしろさ(ベル リン映画祭とのからみとか)… 
すべてをほかの映画祭より、一歩も二歩もリードしてい る、そうカンヌ映画祭でしょうというわけで、気がつけばわたしは12時30分成田発シ ャルル・ド・ゴール空港行、エールフランス275便の中で機内食を食べていた。
“飲み物 はいかがですか?” ”Oui, merci beaucoup.(ありがとう)“ おいおい、相手は日本人だぜ。そう、わたしのフランスはすでに機上から始まっていたの だった。 12時間半にも及ぶフライトのうち半分はワインでも飲んで眠りにつくことにし、半分はカ ンヌの勉強でもしようかしら。

ガイドブックによると、なんと映画祭期間中、カンヌの人口はざっと20万人に膨らむと いう。
そのうち映画関係者は約3万人。まあ、街全体が渋谷の駅前みたいと言うか、祇園 祭みたいと言うか、とにかくすごいにぎわいなんだって。

カンヌと言えばサンサンとふり 注ぐ太陽の中、トップレスのままエヴィアン片手にビーチでくつろぎ、誰にもじゃまされ ない優雅なひとときを味わい、時折“マドモアゼール…なんとかしませんか”ってナイ スガイが声かける、まあ、いわゆる高級リゾート地というイメージを漠然と持っていた けど、さすがに映画祭の時だけは、優雅なカンヌもスーパーの安売り会場みたく変わるら しい。
カンヌの目抜き通り、クロワゼット通りでの優雅なブランドショッピングは出来な さそう。 まっいいか。目的は映画祭なのだもの。
目を閉じて今回カンヌでどんな有名人に会えるかなあ、おもしろい映画は見られるかなあ、 なんて考えているうち、機体はパリ上空に。


 


シャルル・ド・ゴール空港に着いたら今度は 国内線に乗り換えニースだ。時間は午後5時20分。長時間のフライトと時差ボケで体は ぐたぐたに疲れているはずなんだけど、カンヌへの想いが気分を高揚させる。小走りして いるわたし。さあ国内線ゲートへ急ごう。この時間だとニースに出ている便はエールフラ ンス7708便か、7712便。幸いわたしのエアー・チケットは先発の7708便となっている。 この調子だと夜9時までにはカンヌに着ける。この飛行機の下に広がる広大なブドウ畑 を想像しているうち、少しは眠るはずだったのが結局一睡もできず、ニースに着いた。午後7時55分。ふう、やっとニースだ。いや、まだニースなんだよな実は。

 


今回お世話になるホテルは“ホテル・エトランゼ”。そこは、ニース空港から約25km、 カンヌ駅から100mというナイスロケーション。ニース空港からはタクシーで約40分、海岸線をとばしてすぐだ。確かシングル1泊9000円だったっけ。まあ、安い方だ。

それにしても今、自分がニースやカンヌにいることがなんだかうそみたいだ。 それは、単に時刻が夜で周りの景色がまったく見えないこともあるけど、それ以上に念願の 夢が実現したことへの感動が、この現実をいまだうまく受け入れられないのかもしれない。 周りから絶え間なく聞こえてくるフランス語。5月にしては暑いくらいの陽気。そして なんとも言えない独特のにおい。五官で味わう“異国に来たんだわ、わたし“という感動。



 
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